なぜ、トリドールホールディングはDXに取り組んでいるのか。理由はきわめてシンプルです。「食の感動」を世界に広げる真のグルーバルフードカンパニーを目指しているから。そのまっすぐで熱いトップの意思を、インタビュー形式でたっぷりと語りました。3部構成の動画「食の感動について」「DXについて」「グローバルフードカンパニーへの道」と、さらに詳しくお答えしているテキスト原稿も公開します。
トリドールホールディングス(以下、トリドールHD)のDXは「DXビジョン2022」で本格化しました。ひとことで言えば、レガシーシステムを廃止するための計画でした。ポスト「DXビジョン2022」は、「DXビジョン2028」です。「食の感動体験を探求し続けて、真のグローバルフードカンパニーになるトランスフォーメーション」を謳い、8本の柱から構成されています。
「トリドールホールディングスの取り組みは、日本における最先端のDX事例だ」と語る、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授が、磯村康典執行役員CIO/CTOと「真のグローバルフードカンパニーを目指すDXの進め方」をテーマに対談。DXをどのように進めたのか、成功している秘訣は何か、次の展開をどう考えているのか。そんな入山教授の問いかけに磯村CIOが明快に答えます。
2020年春、トリドールホールディングスは未曽有の危機を迎えます。年初に始まったコロナ禍によって、売り上げが半減したのです。主力の丸亀製麺は「うどん弁当」という中食メニューを打ち出しましたが、デリバリー、モバイルオーダーに対応しようとして、混乱も起きました。そこでDX推進が大きな助けとなり、秋には売り上げがV字回復、「うどん弁当」は主力商品に育ちました。
トリドールホールディングスのDXは、「店舗の業務改革」と「店舗を支える本社機能の業務改革」の両面から大きな変革を推進しています。 DX推進計画の「DXビジョン2022」では、それぞれのDXは9つのプロジェクトに分かれ、さらにその下にサブプロジェクトが49設けられました。これらは2023年3月末をメドに完了しますが、完了とともにトリドールグループのビジネス自体も大きく変革されます。
トリドールホールディングスのDXについて社外から変革のスピードが尋常ではないと、よく言われます。磯村康典執行役員CIO/CTOが着任したのは2019年9月。3か月で社内ヒアリングを終えるとともに、「DXビジョン2022」の前身であるITロードマップを策定しました。次の3か月でデータセンターのクラウド化などを行い、導入すべきSaaSもすでに決定。これまでのDXの主な取り組みについて、時系列にまとめました。
トリドールホールディングスのDXは、SaaSやBPOが中心となっています。そのため、DX人材に求められるのは、ITやデジタルの知識はもちろんですが、社内の関係部署や社外ベンダーとの交渉力、コミュニケーション能力です。DX推進室で店舗従業員のワークスケジュール自動生成するプロジェクトを任されているのは、店長経験をもち、営業畑でキャリアを積んだスタッフです。
アメリカの巨大IT企業から転職した経営企画室の武末成祐室長は、すでに始まっていたトリドールホールディングスのDX推進に驚きました。それは、バックオフィス業務を社内で抱えず、徹底してBPOセンターに任せる体制にしていたからです。そして「食の感動体験」を世界へ広めるグローバルフードカンパニーに成長するためにはDXが不可欠で、その道筋を示す中長期経営計画作成にもDXは必須だと話します。
総務部の土屋菜穂さんは、ABWが推奨される渋谷本社が素敵な職場だと思っていたのですが、実は原本で作業しなければいけない業務が多いなど、現実とのギャップを感じていました。それを一掃してくれたのがDX推進です。膨大な請求書処理業務や経費精算などの業務が効率化され、時間に余裕できたと話します。さらに時間とコストを削減する取り組みにも意欲的になり、新たな挑戦をしています。
DXプロジェクトを主導するBT本部DX推進室の海老宏知室長。お店のスタッフが「お客様に感動体験を提供する」ことに集中してもらうため、必要な環境を用意することに注力しています。他に例を見ないほどのスピードでDXを進めてこられた理由、大切にしてきたポイントなどについて聞きました。ほんとにできるの?と疑問視されたスタート時から、次第に信頼を得ていった過程も明らかにします。
BT本部ができる半年前に肉のヤマキ商店を立ち上げた恩田和樹取締役社長は、業務のIT化を推進してきた一人です。DX推進体制ができたので、新業態の立ち上げに専念できるようになったと語ります。お客様へのサービス向上につながった紙の伝票廃止、テイクアウト、イートイン、モバイルオーダー、デリバリーと4つのオーダーに対応する体制ができ、収益も大幅に向上、新たな目標もできたのです。