丸亀製麺をはじめとするトリドールグループの店舗には、店舗業務の効率化を目的にNECモバイルPOSが導入されています。NEC様とトリドールホールディングスがパートナーとして共創し、共に育てていく点がポイントであるというサブスク型POS。どのような苦労があったのか。両社の関係性や、導入秘話を含めNEC スマートリテール統括部モバイルPOSグループ長・兼ディレクター、黒田正治様にお聞きしました。
――トリドールホールディングス(以下、トリドールHD)からモバイルPOS導入のお話があったのはいつごろですか? またどういう内容でしたか?
黒田 たしか2019年末ごろだったと思います。「DXビジョン2022」の中でも語られている、変化への対応力を高めるためにサブスクリプション型のPOSを採用したいという内容でした。これはまさにNECモバイルPOSが当初から掲げていたビジョンと合致していました。
――NECが掲げていたビジョンとはどのような内容だったのでしょうか?
黒田 NECモバイルPOSは「POSは本来シンプルなもの。こだわりを詰め込んだ個別開発の資産を所有するのではなく、汎用的に開発したサービスを共有して利用する時代が来る」とのビジョンに基づき開発した、2014年から提供しているサブスクリプション型のPOSサービスです。トリドール様のような業界のトップランナーの戦略に合致しているということは、私たちの追い求めてきたビジョンがやはり正しかったのだとチームメンバーとともに大変喜んだことを覚えています。
――丸亀製麺全店でのPOS入れ替え作業に関してかなりのスピード感を要求されたと伺っています。
黒田 はい、2020年の暮れから2か月半で全国860のお店にモバイルPOSを導入させていただきました。もちろん、事前に一部の店舗で試験運用を行ったうえでの展開となります。当時はまだサブスク型POSの採用事業者は、比較的小規模の事業者が多く、これだけの規模というのは珍しかったんですね。ただNECという会社は、たとえば全国展開しているコンビニさんなんかに数万店規模での機器の導入経験もある会社なので、そうしたアセットがあるからトリドールさんへの対応もできたという側面があります。とはいえ実際、苦労も多くありました。
――NECさんが選ばれたというのは、そのあたりが大きな理由だったのでしょうか?
黒田 そうですね。サブスク型POSであり、かつフィールドサポート体制が充実していること。この両方があるのはわが社のほかには、なかなかないと思います。わが社は24時間365日コールセンター対応ですし、いざとなったら全国どこでもスタッフをお店に派遣できる体制を取っています。さらに先ほどお話した店舗への導入作業を一斉に多店舗に実施できる力もあります。このような安心してお任せ頂けるフィールドサポートもNECを選んで頂いた理由の1つだったのではないでしょうか。
――サブスク型POSとしては前例のない規模の事業者に導入した訳ですが、その点での困難もあったのではないでしょうか?
黒田 はい、例えば決済端末連携、自動釣銭機連携、ポイントサービス連携など、トリドール様のご要望にも対応していきましたが、技術的に困難ということはありませんでした。しかし、トリドール様が求める機能改善のスピード感に応える部分で苦労しました。NECモバイルPOSは2か月に1回のペースで機能強化バージョンアップをしています。機能強化のご要望はそのバージョンアップ中であくまでNECが提供する標準サービスとしての対応であり、その内容は他のユーザー様にも汎用的に利用いただける必要があります。細かい機能や対応スケジュールについて、トリドール様のご要望だけを基に対応することはできません。一方でトリドール様は、あくまで標準サービスとしての対応であるという前提でも、NECなら期待するスピード感での対応が可能である、それだけの力のあるパートナーであると見込んで採用してくださったわけです。お互いの立場を尊重しながら一緒に議論を重ね、一つずつ課題をクリアしていきました。トリドールHDさんと一緒に仕事をして感じることは、ただ単にお客様が注文して、それをわれわれが請けるといった単純な主従関係ではないということ。ある意味「チーム」といいますか、いいものを一緒に作ろうという姿勢がはっきりしています。われわれと同じ土俵の上に立ってくれて、同じ目線で一緒に取り組んでくれることで、大きな間違いもなくやってこられました。本当に「トリドールHDさんは最高のパートナーである」と言いたいですね。