「食の感動体験」を広めようとするトリドールホールディングス(以下、トリドールHD)にとって、最も大切なのは店舗。その店舗支援のため、バックオフィスをBPO化するのは必須でした。しかも大胆で徹底したBPOとSaaSの組み合わせによるDXは、前例がほとんどない、といいます。その前代未聞BPO化と向き合ったトランスコスモスのBPOサービス統括コーポレートバックオフィストランスフォーメーション本部 小林恵美子様に、どのようなご苦労があったのか、具体的にお聞きしました。
——トリドールHD側から最初に話があったのはいつごろですか?またどういう内容だったのでしょうか?
小林 2016〜17年頃です。最初は「事務周りをBPO化したい」というご連絡をいただいて、調査してどこをBPO化するのか、絞り込みをするところからスタートしました。当時はまだ1000店舗を目指すことが目標で、700〜800店舗ぐらいの規模でしたが急速に事業を拡大しつつあるということでした(2022年6月30日時点で1729店)。しかし、 最初のうちは「何を社内に残すか?」「何をBPOとして外に出すか?」など、スコープが明確でなく、お互いに苦しんでいました。ところが、磯村康典執行役員CIO/CTOが着任されてから、ガラリと変わりました。
――どんなふうに?
小林 「完全にBPO化するんだ」という方針が決まって、急に動きやすくなりました。まず作業としてはBPOの範囲を決めることが重要なのですが、バックオフィス全部をBPOに移すということが決まったので、作業がスムーズになりました。大きな部分はトリドールHD様側で決めていただいて、実務の部分でトランスコスモスが担当しました。仕組みを一新して、この1〜2年で、従来紙でやっていたことをまったく紙を使わずに動かすところまで、進められました。
——全体の流れは分かりましたが、苦労された部分もかなりあったのではないですか?
小林 そうですね。トリドールHD様の社員の方を一部、私たちのスタッフとしてお引き受けするということもございました。それとなにより、自前でシステムを持たずにすべてをBPOに移し、しかもSaaS一本でいくという徹底ぶりのお客様はこれまでいらっしゃいませんでしたので、私たちも腹をくくりました。
――うまくいった秘訣はどういったところにあるのでしょうか?
小林 私たちBPOベンダーの側の努力だけでは、DXや、効率化は進めにくいものです。今回はトリドールHD様側も一緒に仕組みを変える、プロセスを標準化するということで取り組んでいただきました。
とにかく、トリドールHD様の「すべてSaaSに移行する」という意思決定が衝撃的で、勉強になりました。業務システムは標準化したほうが展開しやすいですし、いろんな変化にも強いのです。たとえば、現在、海外進出を進めてらっしゃいますが、SaaSを活かして標準化されていることで、海外進出という大きな変化にも対応しやすいと思います。
また、トリドールHD様のスピード感にも驚きました。一般的に仕組みを検討するのに1年、さらに開発するのに1〜2年という企業が多い中、判断も導入もとても速い。私たちも必死で、そのスピード感についていっている感じでした。おかげで私たちのスタッフも大きく成長できたと思います。
——今回、SaaS導入、BPO化にあたってトリドールHDとトランスコスモスが、共創したという部分が大きかったと聞きますが、その部分について教えてください。
小林 トリドールHD様は、システム変更がわりと多かったのですが、色々な課題をすぐにご相談ができていたのがよかったと思います。仕組みを変える場合、情報システムの方からヒアリングを受け準備をするのですが、なかなか現場の意見を反映していただくことは難しく、結局標準的な機能を使用するといった形で終わってしまうんです。しかし、今回は私たちのメンバーもトリドールHD様のプロジェクトに入れていただいて、一緒に協議しながら作っていきました。現場の声も吸収できたと思っております。
——SaaS化するという大きな障壁を乗り越えられたポイントはどこにあったのでしょう?
小林 多くの企業が、自らの業務に合わせてシステムをカスタマイズしてきたと思うのですが、本来、好きでカスタマイズしていたわけではないはずです。「システム側を合わせるのではなく、自分たちが変わればいい」。そのことに気がついたことで、大きくスピード感がアップしました。正直、我々はトリドールHD様の変革に追随した感じでした。現場の課題感を踏まえて仕組みを変更していただけたので、とても仕事を進めやすかったです。
——トリドールHDが変革を先導したということでしょうか?
小林 トリドール経営陣の方もワンチームとして取り組んでいただけたので、私たちベンダーも改革を一緒に進めていけたと思います。「良くするにはどうしたらいいんだろう」という会話が成立しやすい関係が築けたんですね。ベンダーだけでは業務プロセスの変革はできませんから。今後も効率化してできた時間を使って、まだまだDX化を進められると思うので、新たなお仕事を受けられるように頑張りたいと思っています。