気候変動などにより、世界における異常気象の発生頻度は高まりを続けるとともに、さまざまな生態系システムへ影響が出てきています。トリドールグループでは、自然災害の増加をはじめとする気候変動の影響は、事業にとって大きなリスクの一つであると認識しています。
大規模な洪水、台風等の自然災害や、環境規制の強化などにより、原材料の安定的な調達の阻害や、店舗施設の損壊などによる店舗休業や営業時間の短縮などの可能性があり、事業の継続を困難にします。
一方で、店舗の環境に配慮した設備導入や商品・サービスの提供は、事業コストの削減といった機会にもつながるものと考えています。
トリドールグループは気候変動によって生じるリスクに向き合うとともに、気温上昇を1.5℃未満に抑えるためにCO2排出量削減に継続的に取り組んでいきます。
トリドールグループは、2025年におけるCO2排出量原単位が0.6t-CO2/百万円を環境経営目標の1つとし、環境中期計画としてCO2排出量を毎年1%以上削減することを目標としています。
2013 年度 | 2014 年度 | 2015 年度 | 2016 年度 | 2017 年度 | 2018 年度 | 2019 年度 | 2020 年度 | 2021 年度 | |
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売上(百万円) | 71,513 | 78,734 | 89,315 | 93,881 | 101,409 | 104,815 | 113,251 | 96,055 | 119,664 |
排出総量(kt-CO2) | 143.6 | 145.4 | 141.1 | 136.3 | 134.4 | 134.9 | 133.0 | 122.5 | 123.3 |
排出量原単位(t-CO2/百万円) | 2.01 | 1.85 | 1.58 | 1.45 | 1.33 | 1.29 | 1.17 | 1.28 | 0.96 |
トリドールグループは自然資源を事業の根幹とし、世界の人々に食を提供している企業であり、気候変動への取り組みは経営において重要なインパクトを持つものと認識しています。そのため、当社グループでは、2017年にG20金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」より最終報告された「気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言」を重要なものであると位置づけ、提言に従った情報開示を進めています。その具体的内容として、2022年度においては、気候変動シナリオの詳細な分析を行っていきます。その後、順次事業におけるリスク・機会の明確化と、対策の検討、指標と目標の見直しを行っていきます。
トリドールグループでは、代表取締役社長を委員長とし、取締役、執行役員、ホールディングスの部門長、国内子会社社長、海外子会社主管部門長を委員とする、サステナビリティ推進委員会を設置しています。サステナビリティ推進委員会は、気候変動を含む環境問題や、その他の社会問題など多岐にわたる経営課題に対し、企業として対応していくための全社横断組織として機能しています。
また同委員会は、課題への対応について、方針・計画を検討し、各組織と連携することで、進捗状況の把握・評価を行うこととしています。
トリドールグループでは、サステナビリティ推進部部長を委員長とし、部門長等を委員とする環境委員会を設置しています。
環境委員会は、サステナビリティ推進委員会の下位組織に位置し、気候変動への対応としてCO2排出抑制や省エネルギー活動、その他廃棄物の削減やリサイクル推進等の環境負荷低減に向けて取り組んでいます。
また同委員会は、事業年度毎に環境目標と環境行動計画を定め、毎月の委員会にて進捗状況の把握・評価を行うこととしています。活動実務についてはテーマごとにプロジェクト化し、各組織体が実働していますが、その事務取りまとめは環境委員会事務局が行っています。
代表取締役社長は、上記の委員会組織を通じ、気候変動対応を含む環境活動を統括しています。具体的には、代表取締役社長は上位組織であるサステナビリティ推進委員会を通じ、環境委員会主導で行う環境マネジメントの有効性を評価し、その改善を指示する責任を有し、権限を実行しています。
トリドールグループでは、気候変動を含めた環境テーマに対する専任組織として、サステナビリティ推進部環境マネジメント課を設置しています。同課は事業部と連携し、活動の推進、店舗での監査、外部パートナーとの活動調整など、環境経営目標達成に向けた取り組みを進めています。
トリドールグループの事業は自然資源に依存しており、気候変動の顕在化は大きなリスクですが、一方で、店舗を媒体として多くの社会関係資本を持つ当社グループにとっては、新たな価値創造の機会にもなります。
気候変動によるリスクとしては、暴風雨などによる店舗への物的損失・営業停止や、炭素税によるコストの上昇、消費者の嗜好性の変化、原材料の品質低下や価格の変動、供給の不安定化などが想定されます。認識された各リスクについては、上記委員会で情報共有し、対応のための全体計画の策定および施策の実行をします。
一方、事業機会としては、資源効率性向上や、サステナビリティを意識した新たな商品展開や店舗運営などのイノベーションやそれに伴うブランドイメージの向上などが想定されます。このような事業継続性の向上や競合等との差別化、競争優位性の確立を構築するべく、2022年度においてはシナリオ分析を実施し、より詳細な分析を行っていく予定です。
トリドールグループでは、代表取締役社長を委員長とし、取締役、執行役員、ホールディングスの部門長、国内子会社社長、海外子会社主管部門長を委員とする、リスクマネジメント委員会を設置しています。リスクマネジメント委員会は、リスク管理の統括機関として、リスクについて対応の優先度を決定し、迅速に意思決定と指示を行っています。
なお、リスクマネジメント委員会の事務局はサステナビリティ推進部の配下組織であるリスクマネジメント課が担っています。同課はお客様や従業員等の相談窓口や事故受付を行っており、事業におけるリスクや機会について、ステークホルダーからの要求を直接収集しております。そのため、リスクマネジメント委員会に遅滞なく課題提起を行うことが可能です。
トリドールグループは気候変動への緩和として、環境経営目標を設定し、取り組みを進めています。
・CO2総排出量:2025年150㏏‐CO2
・CO2排出量原単位:2025年0.60t - CO2/百万円
(株)丸亀製麺、(株)肉のヤマ牛、(株)トリドールジャパンの3社合計
・スコープ3については、今後実態調査を進めるとともに、ステークホルダーと協働しCO2排出量削減の取り組みを行ってまいります。
また、トリドールグループでは環境経営目標の達成に向け、国内店舗にて細部にわたる省エネルギー施策を継続・拡大するとともに、新たな取り組みも進めていきます。例えば、外食業界では導入が困難とされるZEB店舗※への実験導入がその1つです。
※ZEB:ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略称で、太陽光発電などの自然エネルギーを利用し、建物で消費するエネルギーの収支をゼロにする建物のこと。
分類 | 大分類 | 小分類 | リスク | 機会 |
移行リスク | 政策・法規制/技術 | 炭素税の導入 | 炭素税の導入により、バリューチェーン上の各過程において課税され、コストが増加。 | 炭素税を考慮した環境配慮型のビジネスプロセスや原材料等の調達により、資源効率性が向上。 |
環境法規制への対応 | 環境法規制への対応によるコストの増加。 | 予め環境配慮型資材の利用を進めることによる法令対応コストの発生抑制や政策インセンティブの獲得。 | ||
市場/評判 | 消費者行動の変化 | 消費者行動の変化に伴う、売り上げの低下。 商品やサービスに関する環境配慮情報の提供不足によるブランドイメージの低下。 | 消費者の気候変動に対する関心に応える、新たな商品やサービスの開発による市場機会の獲得。 環境配慮に関する情報発信によるブランドイメージの向上。 | |
物理リスク | 急性 | 異常気象の激甚化 | 異常気象の頻発により、店舗や物流網の被災や営業の停止。 | BCMS(事業継続マネジメントシステム)による、異常気象発生時における被害の最小化や、早期回復による売上損失回避、地域住民への雇用機会提供や被災地域経済への貢献。 |
慢性 | 平均気温の上昇 | 原材料の生産性低下による、供給量不足や価格の高騰、品質の低下。 熱中症や感染症予防へのコストの上昇や、従業員の健康影響による生産性の低下。 | 調達先の多様化による安定調達や、 代替原材料による新たな商品やサービスの開発による市場機会の獲得。 健康経営の促進による従業員の生産性向上。 |
トリドールグループは、各地域の生産者や農業協同組合等との信頼関係の構築や、地域への還元が重要であると考えており、品質や供給の安定性、コスト等の条件が見合う場合、積極的に地域食材の調達を進めています。
例えば日本国内の丸亀製麺では、北海道産の小麦や昆布、徳島県産のすだち、国産のお米や大根を使用。一方で、北米の丸亀製麺一部店舗では、北米で生産された小麦を使用するなど、各国地域の食材の使用を進めています。また、このような産地使用の取り組みにより、原材料の運搬に伴い発生するCO2排出量の削減にもつなげています。
丸亀製麺のテイクアウト用の専用紙容器は、森林認証を受けた環境にやさしい紙(FSC®認証)を使用しています。また、印刷用のインクには、植物由来成分を含むボタニカルインキを使用し、CO2の削減に貢献しています。
*FSC認証制度:
環境、社会、経済の面で、きちんと管理された森林から生産された木材を製品化する認証制度。森林管理協議会といった独立した第三者認証機関よる審査の後、規格を満たしたと判断された場合に発行されます。
[本ページ更新日:2023/01/123 数値は2021年度のものですが、取り組みの一部は2022年度の情報が含まれています。