「DXビジョン2022」を推進した組織は、BT(ビジネストランスフォーメーション)本部のDX推進室、BPO推進室、データマネジメント推進室の3つの組織です。
BT本部長は、磯村康典執行役員CIO/CTOが兼務し、DX推進室とともにDX戦略を策定、方針を決め、施策の有効性を検証します。
DX推進室はSaaS、DaaSの導入、活用支援を担当し、おもに社外のSaaSベンダーと協力しつつDXを推進します。メンバーは7人です。SaaSなどの導入だけでなく、グループ全体のDX推進を担う立場でもあり、他の二つの推進室とも共同で作業にあたります。
BPO推進室はBPO対象業務の選定および移行支援を担当します。おもにBPOベンダーと協力してDX推進に努めます。メンバーは3人です。
データマメジメント推進室は売上などのデータ管理全般および利活用支援を担当しています。メンバーは4人です。
トリドールHDでは、DX推進に次の5つの専門家が必要と考えています。
(1)ITストラテジスト
(2)ITアーキテクト
(3)データサイエンティストもしくはデータアナリスト
(4)セキュリティ・スペシャリスト
(5)プロジェクトマネージャー
このうち、最も人数が必要とされる(5)プロジェクトマネージャーは一般的にはSE(システムエンジニア)が適任と考えがちです。しかしトリドールホールディングスでは必ずしもSEである必要はないと考えています。プロジェクトマネージャーにとって大切なスキルは、コミュニケーション力です。社内のコミュニケーション、ベンダーとのコミュニケーション、経営陣とのコミュニケーションなどが、プロジェクトをスムーズに進めることができるかどうかの鍵となります。
DX推進室の窪田伸行は、店舗の従業員のワークスケジュール(WS)を自動生成するプロジェクトのリーダーです。これが完成すれば店長は、負担の大きいスケジュール作成・管理から解放されます。
窪田がDX推進室に異動になったのは、2021年9月です。以前は丸亀製麺の4つの店舗で店長を経験し、その後本社へ異動、営業部を支援する部署で10年勤め、IT関係の経験はありませんでした。独学で IT専門用語を理解できるよう努め、ITパスポート取得など基本的な勉強はしました。しかし、同時にプロジェクトのリーダーとして、プロジェクトを進めなければなりません。
WSの作成は店長経験者だけに詳しいのですが、様々なケースがあるために、社内の聞き取りをはじめ自動生成のための要件定義は困難を極めます。特に社内の関係部署との協議、また社外のベンダーとの協議など、IT技術を駆使するというよりは社内外の人たちとの今後行っていく業務の検討やその調整、システムに求める要件の交渉がプロジェクト推進の要となるのです。
窪田は同時に社員向けeラーニング導入と優待券電子化のプロジェクトリーダーも務めています。
窪田は、「デジタルをテコに業務改革をするためには、あるべき姿にもっていくにはどうしたらよいのか」に向かっていく今の仕事は、自分のキャリアビジョンに合致したものだと考えています。
トリドールホールディングスのBT本部には窪田のようなキャリアをもつ人材が数名在籍し、それぞれが様々なプロジェクトで活躍しています。DX推進に大切なのは、DX人材不足を解消するためのこういった人材登用の土壌が社内にあるかどうかといえます。